本当の眠気 ~ J.D.サリンジャー『エズミに捧ぐ』より【言葉のチカラ】

どーも、みなさん! いちみほんじん(一見本人 / いちサンプル)です。

 

言葉はサプリメントになる、言葉のチカラを糧にしてみよう! という趣旨で、古今東西における珠玉の名言・至言を集めて紹介していきたいと思います。

私は言葉に決定的に救われたことが何度かあるので…

 

今回はJ.D.サリンジャー『エズミに捧ぐ-愛と汚辱のうちに』(『ナイン・ストーリーズ』収録)から、その極めて印象的なエピローグを取り上げます。

 

以下、ある意味ネタバレなので、ご注意ください!

 


ナイン・ストーリーズ (新潮文庫)

 

「エズミ、本当の眠気を覚える人間はだね、いいか、元のような、あらゆる機___あらゆるキ-ノ-ウがだ、無傷のままの人間に戻る可能性を必ず持っているからね。」


You take a really sleepy man, Esme', and he always stands a chance of again becoming a man with all his fac---with all his f-a-c-u-l-t-i-e-s intact.

 

J.D.サリンジャー 著 /  野崎孝 訳 『エズミに捧ぐ-愛と汚辱のうちに』(『ナイン・ストーリーズ』より)新潮文庫

 

『エズミに捧ぐ』はJ.D.サリンジャーの短編集『ナイン・ストーリーズ』に収録されています。上記の引用はこの物語のまさにエピローグ、最後の一節にあたるものです。

 

私がこの本を読んだのはずいぶん前なので、話の筋道をくわしく思い出すことはできません(頭の中で『ガープの世界』の冒頭と混ざってしまっているような…)。それでも、このエピローグは初めて読んだ時から、一字一句たがわずずっと覚えています。それくらい強く、深い印象を受けました。

 


 

無傷のままの人間に戻る可能性

 

ひとたび人間が傷を負ってしまったら、それをなかったことになんて出来やしない。身体からも心からも、たとえ外見上そう見えなくても、決してなかったことにならない。記憶から完全に消し去ることは出来ないし、かさぶたの痕の小さな変色を元通りに戻すことすら難しい。

 

でも、無傷のままの人間に戻れないことを知っているからこそ、どんな状況からであれ人間は再生していくのだとも思う。人間の可能性、超回復の可能性を夢見ることに何ら罪はないはずだ。

 


 

私は眠りというものに苦労したことはほとんどないのですが、それでも数回程度は眠れぬ夜を過ごしたことがあります。数十年の人生で延べ10日間にも満たないと思いますが、一番ヘビーだったときは3日間で3~4時間くらいしか眠れませんでした。そういう時期があって、当時、確実に身体に変調をきたしてしまったので、当たり前ですけど人間にとって睡眠というものはやはり大事ですよね。

 


 

いつもとは違う時間、異なる状況でふと眠気を覚えたとき、この言葉を思い出してほんのちょっと安心する。「ああ、これはもしかしたら本当の眠気というやつが来たのかもしれない。だから、私はくり返し回復していくんだ…」と。

 

そして、傷つき苦しんでいる人がいるのなら、この言葉を知ってほしいと思う。人間の健康にとって睡眠は大切です、という以上の医学的なエビデンスをこの言葉が背景として持っているわけではないだろう。それでも、今、この瞬間に痛み傷つき苦しんでいる人が、この世界のどこかにいるのだとしたら、この言葉を知ってほしい。そして、信じてほしい。嘘でもいいから、信じてほしい。そうして、ほんの少しでも安らかな気持ちにくつろいで、ひとときのやさしい眠りについてほしい。気休めでもかまわないでしょう、ざわたついた心がほんの一瞬でもやわらぐのなら。

 

 


Chicks@中野ミュージックフェス 『スイミン不足』 オリジナルver

 

 

私たちにはいつだって言葉がある。

けたたましく数字優先のこんな時代だからこそ、言葉のチカラを信じてみたい。呼び起こしてみたい。

響く言葉、癒やす言葉、救う言葉に、あなたがきっと出逢えますように。

そのとき、言葉は人類最高のソリューションになる。